Calla Lily



calla lily

この花は私にとっては自然界の抽象彫刻。
光と影の象徴性を秘める花。
個体によって様々な個性的な花の形はときに女性の裸体や横顔にも見えるし、ドレスをひるがえしたようにも見える。
想像する余地のあるこの花は私にとって特別なもの。

芸大受験の予備校の講師をしていた時、生徒が石膏デッサンに謎の傷のような跡をつけていたのでこれは何かと聞くと、立体感を出すための回り込みの稜線ですと言った。
予備校によっては確かにそういう描き方を教え込まれることもあるのだが、
それは素直にものを見るためにはとても邪魔な固定概念で、その子たちはモチーフを見ずして人の言ったことを一生懸命形にしようとしていた。

どんな世界でもそういう事は当然あることで、私自身も絵画に没頭していた時、この描き方が1番素晴らしいんだと信じ込んでいた描き方があった。
けれどその世界から離れてみると本当にそれは素晴らしかったのか?と疑問に思った。
そのとき私のバックグラウンドは美術だけれど、それが武器でもあり自分を盲目にさせるものだと理解した。 

モチーフ1つに対しての向き合い方は、花を花と思わず自分が感じるまま、見えるままに。
これはカラーという花です。という写真は撮りたくない。
特にカラーは写真家でいえばメイプルソープの代名詞なので、人はそういう目線で見たとしても私には私の見え方がある。
私にはこの花は神がつくった自然の抽象彫刻のように見える。
花びらの巻き方は繊細かつ力強く、シンプルかつ複雑で、その中に光と影のドラマがある。
観察すると同じ花だとしても一つ一つがそれぞれの美しい個性を持っている。
決めつけないこと、それが花へ対しての敬意でありそれが私の在り方だと思っている。

といってもまだまだ私は彫刻や絵画の固定概念を拭い去れないのだけれど、、、。

自分の原点を大切にしつつ、
自身の眼を開くことできれば、おのずと詩はきこえてくるのだろう。