ベルリンとわたし


当時ヨーロッパの中で1番アートが盛んだと言われていた街、ベルリン。

けれど私の心に残っているもの、それはベルリンのアートシーンではなくベルリンのハートだった。


博物館島まで行く道のり、

真っ白に舞う無数の綿毛がきらきらとあたり一面を幻想的な世界にする。

人々は公園でクラシックの生演奏とともに芝生に寝転がる。

その時流れたショパンワルツ7番、

決してうまくはなかったけれどこの曲を聴けば今でも目の前には当時の情景が浮かんでくる。

クロイツベルクの川辺、

いろいろな人種が行き交いそれぞれの国の楽器で自分たちを表現する。

見たことのないかたち、音に日本では感じたことのない不思議な感覚を味わった。

毎日通った地下鉄の駅では無名の音楽家が奏でるシンドラーのリスト、せつないバイオリンの声...。

街の中に忽然と現れる豊かな自然もまた面白く、少し足を伸ばせば街とは思えない農場も広がる。

またベルリン市民も街に住みながらも自然をとても愛していた。


いろいろな人との出会いと気さくな笑顔、

ベルリンという街に溢れる様々な人の人生…。

私にとってベルリンはアートの街ではなく

人々が行き交うハートの街だった。

旅の終わりに私は最初の目的とは違ったものを確かに獲得していたように思う。


世界中が変わってしまった今、ベルリンもどうなっているかもうわからない。

私の人生にも大きな変化がたくさん訪れた、けれど私の心はいつまでもあのときのまま愛を求め続けている。